グループ全体のメディア掲載を各媒体社の
許諾を得た状態でサイトに一元化。
ウェブ閲覧の利用で、著作権侵害の「不安から解放」
学校法人佐野学園 法人本部広報部
神田外語グループ(学校法人佐野学園=東京・千代田区)は自社のウェブサイト内に「メディア掲載事例」のページを設けている。近年、傘下に持つ神田外語学院や神田外語大学などの活動を紹介する記事が頻繁にメディアに掲載されるようになったことに対応した。このうち日本経済新聞社発行の各種新聞や日経電子版に掲載された記事については、日経の「ウェブ閲覧サービス」を利用している。
神田外語グループは、神田外語大学や神田外語学院のほか、企業向けの神田外語キャリアカレッジ、児童向けの「キッズクラブ」、語学研修施設「ブリティッシュヒルズ」なども多角的に展開している。
同グループの法人本部広報部は、グループ全体の広報統括部門として、記者会見やメディア取材の対応、リリース配信のほか、新聞、テレビ、Web等各メディアに掲載された自校記事を二次利用する際の申請業務も担っている。
導入の背景
グループのメディア露出増加により、リスク管理の必要性が増しコンプライアンス意識の向上を図った
理事 法人本部 本部長 佐野幸治氏
「2019年度にメディアで紹介された件数は、11月19日時点で246件となっています。掲載された記事をグループサイトの「メディア掲載事例」で紹介する際の許諾申請を担っておりますが、ほかに学内外に配布する広報資料などの紙媒体に掲載するケースもあります。
広報業務を担当する上では、学校の掲載事例を世間に広く開示したいと考えています。私は以前から広報活動を担当していましたが、そのために「メディア掲載事例」に掲載するといった二次利用をする際のルールについては、各メディアのサイトなどでその都度確認をしてフォーマットに則って申請をしています。
現在では、期限がくると古い記事が削除されるように設定されていますが、ひと昔前は、更新作業もすべて私が目を通して確認していました。 日本経済新聞社は、二次利用の使い勝手も他社より進んでいたという認識は持っておりました。該当記事のPDFをリンク先で閲覧できるのも日経だけで、他社はPDFをそのまま張り付けています。
以前は、当グループとして年間10〜20回程度の掲載だったのですが、ありがたいことにグループの認知度が高まるにつれ、取材が多くなりました。掲載件数が年々増加して100回単位になると、もう、私ひとりでは対応しきれなくなってきたのです。
コンプライアンス上のリスク管理をより徹底することの必要性は感じておりました。講師陣が取材を受けた場合は、媒体社さんの知的財産権のフォローまで周知するのも私たちの役割ですが、先生方にも、著作権侵害に詳しくない方もいます。先生の研究に対し、メディアの方が取材をされて記事になった場合、該当記事を学校の授業で使用することはこれまでもありました。もちろん無断で記事をコピーして二次利用してはいけないということや、Webサイト等に掲載する場合は、きちんと申請が必要であることなどを説明しています。そんな背景もあり、リプリントサービスの「ウェブ閲覧」の導入に至りました。Webと紙媒体の双方を補完するのが理想的ではありますが、昨今では、紙媒体での二次利用より、Webのほうがより利便性が高いという判断に至りました。」
(理事 法人本部 本部長 佐野幸治氏 / 法人本部広報部次長 渡邉公代氏)
具体的な活用方法
メディア掲載情報が一元化され著作権侵害の不安もなく自社掲載記事を活用
グループの学校の活動を紹介する記事がメディアに掲載された場合は、その都度、神田外語グループ公式サイトの「メディア掲載事例」のページで公開している。日本経済新聞社発行の各媒体に掲載された記事は、2018年度に13件を数え、その他の新聞社の記事は年間で181件に及んだ。
「日本経済新聞社の場合、同社のリプリントサービスに申し込んだうえで許諾料を支払い、記事PDFを閲覧できるリンクURLの提供を受けています。そのリンクURLをグループの公式サイト内の『メディア掲載事例』のページに張っています。URLをクリックすれば該当記事PDF形式で実際に紙面に掲載されたイメージのまま閲覧できます。グループ全体のメディア掲載をここに一元化できるので便利ですね。
掲載記事によっては、Web上での公開に留まらないケースもあります。例えば、大学や専門学校での保護者会や教授会、役員会といった会合の席で配付する資料に、当該記事を盛り込んで共有することもあります。その場合も同様に、日本経済新聞社のリプリントサービスを利用しています。所定の許諾料を支払えば、著作権侵害になることもないですし、自分たちで複写して使用できるので、やはり安心できますね」
(前出・理事 法人本部 本部長 佐野幸治氏 / 前出・法人本部広報部次長 渡邉公代氏)
同上 佐野幸治氏
同グループでは、7つの事業部の部門長と広報担当職員をメンバーとする広報部会で情報共有している。また、コンプライアンスの専門家を講師として招いて、職員を対象にセミナーも開催している。そのような活動により、グループ全体のコンプライアンス遵守の意識向上を図っている点も見逃せない。
近年では、2016年に「日本複製権センター著作権研修」を行ったほか、2017年には「東京2020オリパラ競技大会におけるブランド保護基準に関する研修」、2018年には、「オリンピック・パラリンピックにおける知的財産 アンブッシュマーケティング研修」を行った。
「私どもは、オリンピック・パラリンピック組織委員会の大学連携チームのメンバーではありますが、スポンサーではありません。五輪関連では、文言一つとっても、スポンサー様の権利等に配慮する必要があり、プレスリリースでもどこまで使っていいのか、綿密にチェックする必要がありますから。「これはいい、悪い」という判断は、組織委員会に委ねるケースもありますが、ある程度のレベルでは、我々も全員がガイドラインを共有できるようにはしています」
(前出・理事 法人本部 本部長 佐野幸治氏 / 前出・法人本部広報部次長 渡邉公代氏)
導入の効果
知的財産権や著作権侵害に対してのリテラシーが目に見えて向上した
リプリントサービスの導入により、メディア掲載が一元化されただけでなく、知的財産権や著作権等に関するリテラシーが全体的に高まったことが、効果として感じられるという。
「かつては、先生方や職員から『この記事はどうすれば授業などで二次利用できるのか』、『これは二次利用してもいい記事なのか』という事前確認を、こちらにされることがありませんでした。そのような確認作業が一般化されるようになったことも効果として現れていますね。
著作権の扱いは本当に複雑で、新聞社、出版社によっては、紙面には掲載されていた図版でもWeb上では掲載不可となるなど、様々な対応があります。一般紙や海外の新聞の場合では、新聞社と通信社の双方に許諾料を支払っておりますし、場合によっては写真については別途必要なケースもあります。
以前は、取材を受けた担当者が、記者の方や編集長などから個別に記事の利用許可を受けていたケースもありました。ひと昔前までは、メディアの方も多少は鷹揚に対応してくださったこともあったのかもしれません。しかし、現代はそうはいきませんし、中には許諾手続きがとても複雑だったり、費用もかかったりするため、取材を受けた講師ご本人で申請を行うのはやはり大変だと思います。
各部会や研修会等を通じて、広報部がこのような活動を行っていることが認知されたこともあり、グループ全体に著作権や知的財産権に対してのリテラシーが生まれ、コンプライアンスの重大さを認識してくれるようになりました。このことは、大きな成果だと感じています」
(前出・法人本部広報部次長 渡邉公代氏)
1957年に初代学院長である佐野公一氏が東京・神田にセントラル英会話学校を開設し、1987年には千葉県に神田外語大学を設立。以降もグローバル時代への到来と共に、同グループは存在感を増している。従前からコンプライアンス遵守の意識レベルも高かったことが、リプリントサービスの導入にも繋がったのだろう。
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